注文その1

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    「人を好きになる事は幸せな事。君は心の底から好き合う事を願っているのに、それを表に出す事すら出来ない不器用な人間。そんな君を、たくさん私が愛してあげる」 俺は何かの魔法にでも、かけられているのか。 その真面目な笑い顔を見てると……しいなの言葉を聞いていると段々と心地良くなって、こういうのも有りかなって思えてきた。 お金を払って恋愛ごっこ? ありえない。 ありえないのに。 「な、2時間だけ好きになるって何だ? 本当に俺の事を好きになってくれるなら、今だけじゃなくてずっと付き合ってくれたらいいじゃねえかよ」 意識を根こそぎ吸い込まれそうな笑顔に、俺は思わずそう聞いてしまった。 「規約その5。私達との時間はお金で得た、魔法の時間。だからこそ本気で好きになれる、好きと信じられるの。時間延長も、変更も出来ない、唯一の時間」 限られた時間だからこそ、本気になれる? 「さ? 早くクレープを食べに行こう? 限られた時間は、あと1時間。早くしないと終わっちゃうよ?」 そう言って体を退こうとするしいなを、俺は思わず抱きしめた。    
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