注文その1

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    「解った、もういいや。好きって言葉、残酷だよな。俺ってさ、女の子と今まで付き合った事無いから、そういう感情が入ってない言葉でも重く感じるんだ。しいなみたいに、凄く可愛い子が俺の本当の彼女になってくれたら、どんなにいいだろうなって思う」 「賢治くん?」 寂しさ紛れでさ。 風俗に手を出したりするのって簡単なんだ。 別に好きって感情が無くてもいいもんな。 かえって、相手が自分に好意を本当に持っているか、好きって言葉が本当かどうか探らなくてすむ。 いつもみたいに、好きになった子を傷付けて、関係が遠くならなくてすむ。 何でこんな仕事をしているのか知らないけど、一瞬だけ恋人のふりをするなんて、余計に辛くって、虚しくなるだけじゃないか。 もうこれ以上、好きって簡単に言って欲しくない。 「ごめん、ありがと。時間まだ有るけど、もうここらでいい。珍しくて貴重な体験出来て楽しかった」 恋人ごっこは、もっと女の子慣れしている奴の方が楽しめると思った。 そう思って、抱きしめた体を離した。    
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