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「そんな仕事、じゃあやめろよ……」
「え?」
罪悪感が有るのに、俺の口から自然に出た言葉は肯定とは反対のものだった。
「人を理解する為に体を売るくらいなら、他にも方法が有るだろ? それに、商売と実際に付き合うってのは違うんだ。例え今までがうまくいかなかったとしても、しいなを理解してくれる人を探した方がいい」
そう、世の中には色んな奴が居る。
「そんな事までして努力するくらいなら、新しく誰かと付き合って、相手の事を理解するように努力しろよ。それか、自分を受け止めてもらえよ」
「努力……か」
いつのまにか乾いた頬には、くっきりと涙の跡が付いていた。
「努力をしてない君に、努力をした人の心が解るの?」
笑顔で言ったその言葉は、遠慮なく俺の心をずたずたにした。
「そ、それは」
「凄く大好きで、一生懸命頑張って好きになってもらおうとして、そんな相手の心を実は自分が傷付けていたと知った時、君ならどうする?」
傷付けた。
いつの間にか無くなる会話。
繋がらない携帯電話。
傷付けたと思ったから。
……俺は、誰かと付き合おうとする事すら放棄した。
「ね?」
そう言って、しいなは俺に手を差し伸べてきた。
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