注文その1

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    「そんな仕事、じゃあやめろよ……」 「え?」 罪悪感が有るのに、俺の口から自然に出た言葉は肯定とは反対のものだった。 「人を理解する為に体を売るくらいなら、他にも方法が有るだろ? それに、商売と実際に付き合うってのは違うんだ。例え今までがうまくいかなかったとしても、しいなを理解してくれる人を探した方がいい」 そう、世の中には色んな奴が居る。 「そんな事までして努力するくらいなら、新しく誰かと付き合って、相手の事を理解するように努力しろよ。それか、自分を受け止めてもらえよ」 「努力……か」 いつのまにか乾いた頬には、くっきりと涙の跡が付いていた。 「努力をしてない君に、努力をした人の心が解るの?」 笑顔で言ったその言葉は、遠慮なく俺の心をずたずたにした。 「そ、それは」 「凄く大好きで、一生懸命頑張って好きになってもらおうとして、そんな相手の心を実は自分が傷付けていたと知った時、君ならどうする?」 傷付けた。 いつの間にか無くなる会話。 繋がらない携帯電話。 傷付けたと思ったから。 ……俺は、誰かと付き合おうとする事すら放棄した。 「ね?」 そう言って、しいなは俺に手を差し伸べてきた。    
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