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握るのが当然のように差し出された手を、俺は握らなかった。
「賢治くん?」
「しいなは、それでお客さんを一生懸命好きになったつもりかも知れない。だけど、そんな愛、俺にはやっぱり迷惑だ」
「え?」
「2時間だけ相手を好きになるなんて、有り得ない……と思う」
「だから、違うって。他の人と賢治くんは違うの。私の体に手を出して来なかったし、こうして話も聞いてくれるし! だから2時間、好きになるのにぴったりの相手だと思って!」
「それで結局、2時間経てば他の奴と同じ様に、はいさよなら、かよ」
自分の声が、ひどく低く、落ちていくのが解った。
「悪ぃな! 俺な、本当に今までここまで女の子に好きって言われた事が無いからさ! 馬鹿だから、そういうお前の自己満足でも、嬉しいって感じてしまうんだよ!」
何故か解らない。
しいなの涙に釣られたか。
それとも、自分の情けなさにか。
俺自身の頬に、冷たい涙がボロボロと流れていくのが解った。
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