注文その1

23/27
前へ
/1333ページ
次へ
    「一生懸命好きになるくらいなら、俺の事を気に入ってくれたなら、俺と一生付き合ってくれよ! きっかけなんて何だっていいだろ? 俺だったら少々傷付けられても平気だから!」 そうだよ。 俺だったら何を言われても、どれだけプライドを傷付けられても平気なんだ。 お前が自分を殺してこんな商売をするのと同じ様に、俺だってどれだけ自分を傷付けられても、それでも一生懸命人を好きになりたい。 「自分だけが愛を捧げるなんてずりいだろ! 俺にだってお前を好きになる時間をもっとくれよ!」 喉が枯れるくらい、一気に喋った。 言った後、自分が何でそんな事を口走ったか、理解できなかった。 だけど……凄くすっきりした。 しいなは両手で口を覆いながら、また泣いている。 さっきと比べ物にならないくらいの涙。 「私……この商売をしてないと、誰かと付き合っていくのが怖いの……無理だよ」 「大丈夫だ。俺はお前を受け入れる」 「私、何でもかんでも先を考えずに口走るから……」 「大丈夫だ、俺だってそうだもん。それを許してくれるのなら」 「私は、平気。今まで自分が付き合った人を傷つけた罰だから」 俺はそれを聞いて、小さな頭を抱きしめた。    
/1333ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23910人が本棚に入れています
本棚に追加