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「昼飯の時間だ。さっき正午の鐘が鳴ったろう?」
「ん?ああ、そうだね」
手にしていた袋を石垣のもとに置いて、彼は凝り固まった腰を伸ばした。
「ん~~~っ、疲れた。お、シチューだ!」
石垣の向こうでは人だかりが出来ており、シチューの入った大鍋の前に立つレスターの声が響いている。
「こーら!並んで並んで!あんたはちょいとサボってたから、これで我慢しな。働き者のトムには山盛りでないとね。ん?なんか文句あんのかいギッシュ!ちゃちゃっと食って働きな!」
人だかりから一人の少年が弾き出され、底が見えるくらいにしか盛られていない皿を見つめて、しょんぼり肩を落としていた。
その姿に哀れを感じたクロは、自分が大盛りにされたら分けてやろうと思ったが、考えてみれば自分も作業を怠けて昼寝をしていたのだから、分けるどころか恵みを求める立場であることに気付いて、やはり早々に肩を落とした。
ホワイトハート家の隣家、ウエスト家の家長、レスター・ウエストは男勝りな性格で、威勢のいい女性である。
黙っていれば村で一番の美人なのだが。
「俺は最後に取りに行くからよ。クロ坊、お前先に行ってこい」
ごつい指をモジモジと絡めて、ドモルはどこか上の空でそう言った。
クロはやれやれという具合に首を振ってから、石垣を越えていった。
しかし、シチューを配っている場所を素通りして、草原に挟まれた道に入っていった。
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