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「ヴィナー、何してるんだー?」
花を直接踏まないように心掛けて、クロはヴィナのもとに近付いていった。
しかし、彼女はクロの言葉に何の反応も示さず、じっと地面を見つめている。
それを不審に思いつつも、彼はヴィナの傍らに辿り着いた。
「ヴィナ?どうしたの?」
恐る恐るという具合に手を挙げて、彼は彼女の肩を掴み、少し前後に揺らしてみた。
しかし、やはりヴィナは無反応である。
何かに魅せられたように、その目は微動だにしていない。
そこでようやく、クロは自分の足下に何かが転がっていることに気付いた。
彼女の視線が常に地面の一点へ注がれていたからだ。
クロは菜の花を除けて、それを見た。
「……剣?」
無造作に置かれていた物は一振りの剣であった。両手で持つ長めの代物である。
艶のある黒い鞘、柄の先端には透明な石がはめ込まれている。
どうして剣が落ちているのかは考えず、何故かクロは初め、綺麗な剣だと思った。
手入れがよく施されている。もはや新品と変わりがないくらいであった。
そして、見れば見るほど、彼は妙な気持ちになっていく。
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