第二節~千年来の災い~

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 曖昧な意識が覚醒し、クロは自分が村長の家の居間に寝かされていることに気付いた。  長椅子を丸々一つ使って、その上に横たわっている。 「気がついたかい?」  傍らにはレスターがいた。起き上がる彼の背に手を添えて、クロが状況を飲み込むのを待っている。  落ち着き無く視線を方々に走らせてから、クロは一度目を閉じ、ゆっくり開いた。  そして、レスターの顔を見つめる。 「ヴィナは?」 「奥にいる」  その問いを予期していたらしく、レスターはきっぱり答えた。  早速向かおうと腰を上げたクロは、しかしレスターがベルトを掴んだために、すとんと尻を着くことになった。 「…え?」  当惑した様子でクロは振り返る。  毅然とした態度のレスターは一度首を振って、彼の両肩を押さえた。 「あんたはここで待つ。エゾ翁の申し付けなんだ。悪く思わないでくれ」  クロは一層混乱した。  エゾ翁こと、グーム・エゾはロック郷の村長である。最長老ながらもかくしゃくとした老練だ。  クロの父親、ドモルはかつて村一番の悪童であったが、エゾ翁にだけは殊の外素直であり、慕っていた。  エゾ翁もドモルを我が子のように扱っていたので、その子供であるクロは孫も同然と言っていい。  だから、村長の家はクロにとって第二の我が家であった。  その彼が居間の奥、翁の私室の立ち入りを禁じられるなど、滅多にない事態である。
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