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「申し付け?どういうことです?ヴィナは無事なんですか?あの光は何なんですか?それと、そう、剣がありました。あの剣は?何が起きたんですか?」
「クロ、落ち着きな」
ぐっと肩を掴む手に力を込めて、レスター・ウエストは口をつぐんだクロの双眸を見つめる。
「いいかい?まず、ヴィナちゃんは無事。そればっかりは保証する。だけど、他に関しちゃあたいは全く知らない。当事者のあんたがわからないんだから、あたい達にわかる道理がないね」
レスターの言葉は正しかった。いくらか落ち着きを取り戻し始めたクロは取り乱した失態を詫びる。
レスターはそれを快活に笑い飛ばしてから、クロと同じく、しかし強い瞳で村長の部屋を見つめる。
「大変なことと言ってたね…、長がそこまで言うなんて、一体なんだろうね…」
嵐が来ても顔色一つ変えないエゾ翁にとってさえ大変なこと、それがどのようなことなのか、クロには考えられなかった。
「あの剣が関係しているのでしょうか?」
クロの言葉にレスターは首を傾げてみせ、手近な椅子を二脚持ってきて、一つをクロに勧めた。
彼は大人しく腰を下ろし、レスターと向かい合う。
「あたいが子供の頃に聞いた話だけど…、といってもお伽話の類さ。どこまでが本当なのか、わかったもんじゃない」
彼女にしては歯切れの悪い話し方であった。クロは何か重苦しい影が自分の心に広がるのを感じた。
いつもなら集会などでしか使われない広い居間に二人きり、苦い顔で彼女は語り出した。
「千年前の大戦を知ってるかい?バカのドモルだって、さすがに教えているだろう。闇の国『ネスダルク』が王の国『ノストランディル』を始めとする五カ国に喧嘩を売った、まさに史上最大の、エスタシア全土を巻き込んだ大戦さ。その呼び方は様々で、一つにはこうある。『剣の戦い』ってね」
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