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頭がすっぽり隠れる大人物のハンティング帽を被ったその人物は、クロの顔をのぞき込むように屈んだ。
しかし、全く起きる気配を見せない様子に辛抱できず、小さな右手で彼の左頬をつねり上げた。
「ぃぎっ!?」
「うるさい!怠けクロ!」
思わず声を上げたクロに、その人物は甲高い声で叱責を与えた。
残っていた左手も使って、彼の頬をあちこちに引っ張り続ける。
「みんな働いてるんだから!あんたもちょっとは手伝いなさい!」
「らっへ、ほへは、ほ、ちょっほ、はへ、ひはい!」
ぐちゃぐちゃにいじられているので、彼の口は満足に声を出せなかった。
その状況は十数秒続き、ようやく解放された頃には、やはりクロは立ち上がる元気を失して倒れていた。
「だから、起きなさいって!」
自分でそのような状態に陥らせておきながら、その人物、少女は大きな声を彼に浴びせた。
「ヴィナ…、滅茶苦茶だよ…」
ぴりぴりと痺れる頬を片方だけ押さえて、クロは立ち上がった。
そんな様子を少女、ヴィナ・ジオディは腕組みをして睨んでいた。
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