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いってらっしゃい、と自分にしか聞こえない声でつぶやき、バタンと部屋の戸を閉める。
薫は私も通っている白山学園の新入生だ。
衣替えが終わり、初夏の暑さが少し感じられる今日、たいていの子は、まだ緊張しているのが普通なのだが、家で見る薫はそんなこと微塵も感じさせない。
おそらく学校でもそんな調子なんだろう。
確か、あの子の担任は新人の英語教師だった筈…
と、いかにもどうでもいいことを考えながらタンスに入っていた細めのGパンと白いTシャツを取り出す。
文句は受け付けない、面倒なのだ。
そういう私に、友人のもっと可愛い格好すればいいのに…という小言が聞こた気がするが、そんなことは一切気にしない。
部屋の鏡を見て、もう一度寝癖が無いか確認し、階段を降りる。
そこで、
「食器片付けておいたわよ。いってらっしゃい。車に気をつけてね」
「あっ…、ごめん。それじゃ、いってきます」
と先日買った安物のスリッパを履いて外に出た。
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