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「おはよう、結衣」
階段から降りてきた私に、母である吉川葵がいつもののほほんとした音色で朝の決まり文句を言う。
「うん……、お母さん…」
朝が弱く、尚且つ低血圧である私は、覚醒していない頭で母に返す。
いまだ意識が曖昧な私は、顔も洗わずに朝食が準備されている食卓に着く。
対照的に、我が妹は一足早く食卓に着きなにやら騒がしくしているが、生憎意識が朦朧としている私にとっては黙ってほしい限りである。
「ねぇ、ねえったら…お姉ちゃん。ちょっと聞いてる?あのさ、今日もあそこ行くんでしょ?」
「…うん。」
「じゃあさ、今度でいいから私も連れて行ってよ。あそこってさ、お姉ちゃんみたいな“特別”な人じゃないと入れないんでしょ?」
今まで騒がしくしていた妹の薫が何か私に向かって不安そうなしかし、子供じみた興味心を顔に浮かべて話しかけてくる。
私にとって、とても大事なことを言ってるような気がするのだが、今の私の頭は働いていないわけで…
「……うん」
「やったぁ!本当に、お姉ちゃん?うわぁ、私、すっごく楽しみ!」
「………うん、って、えっ!?」
そこで、やっとのことはっきりと物事を考えることができるようになった私は、慌てて妹に聞き返した。
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