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『智紀は』
言いかけて止めた。
みんなの目が瑞希を見ている。
母親の目は赤く父親は怒りからなのか少し震えているようだ。
プライドの高い父親らしい。
奈美さんは興味深い目で瑞希の次の言葉を待っていた。
『瑞希、智紀さんが原因と言うのなら今ここで話てみろ』
瑞希は頭の中で即座に計算した。
そして…黙った。
『ほらみろっ。何も言えないじゃないかっ。笹塚さんに丁重にここでお詫びしろっ。今ここですぐに、だ』
瑞希は無言で首を横に振った。
途端に父親の平手打ちが飛んだ。
頬がみるみる熱くなって耳なりがした。
しばらく何も聞こえず、母が父を止める様子と奈美さんの憎たらしい横顔が静止画の様に見えた。
(私、父親に叩かれたんだ…)
瑞希は思った。
(私、こんなに叩かれる程ヒドい事をしたのかしら…?)
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