瑞希

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仕事は大変だ。 お客からの電話応対も顔が見えない分必要以上に気を使うし、内容にクレームも増えた。 本当に当方の原因ならば素直に謝るが、実際には(違うなぁ)と思いながら謝ってるのが現状だ。 今日もそんな電話を受けるのかと少し憂鬱になりながら玄関に鍵をかけた。 息子は自らヘルメットをかぶり自転車の横で待っている。 慎重に子供を前のカゴに乗せて軽くヘルメットを叩く 『レッツ…』 『ゴー!』 ペダルは重いが風を切って走るのは気持ちいい。 『ママぁ』 晴斗が振り返る。 『あっち』 指さした方向にはクレーン車が止まっていた。 『おっきいねぇ』 晴斗は少し笑ってまた前を向いた。 小さい背中で毎日嫌でも頑張ってるんだね…なんて思いながら進む。 ママも頑張るから晴斗も頑張って。 声にならない気持ちでいっぱいになる。 少し前かがみになって力を込めた。
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