瑞希

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晴斗を送ってからそのままいつもの電車に乗り込み、単行本の続きを読む。 周りを気にしなくて良いし、不信がられない、一番安全な方法。 昼休みと通勤時で読んだ冊数は10冊を超えた。 家に帰ったらこんなゆっくりした時間は作れない。 夕食を作り、晴斗と風呂に入り、21時には布団に入る。 夫の智紀は毎晩帰りが遅い。 気付くと晴斗の隣で寝ている感じだ。 朝起きれば、夕食の空の皿が洗って置いてある。 それを見る度少し胸が痛む気がする。 毎日時間割ごとに動いて、ただ流れに身を任せてる。 智紀に遅い理由を聞く事もなければ、これからの事を語り合う事もない。 晴斗が出来てから、智紀に触れる事もなくなっていたが、今はそれが自然だった。 晴斗で満たされてしまい、智紀との時間よりも大切にせざるを得なくなった。 友人からは『今は母性の方が勝ってるんだよ』と言われて、戸惑った。 智紀の性欲はどうしてるのか、心の奥底に聞けずにしまったままだ。 おそらくこのまま、たまの休日には当たり障りのない会話でまた年をとっていくのだろう。 私達夫婦には変化を追求する余力さえ残ってなかった。
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