序章:完成と崩壊の失楽

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「完成……ですね」  白衣を羽織った研究員の一人が呟くように言う。  国立科学新技術開発センター。それがこの研究所の名前だった。直接国の傘下に組しており、国家の躍進のため各分野からトップの科学者を招聘して日々研究を重ねている。  広大な敷地、莫大な資金。国から絶大な支援を得ているこの研究所では、世俗と十年以上の技術格差が起きていると言われている。 「こいつが──これがあれば日本は最強の軍事国家となり、我々は世界を統べる最高機関となる───!!」  普段の担当部署を離れ集結した総名五十を越える研究員達の目の前にあるのは、透明な十二の円筒。多数の機械が接続され中身を特殊な液体で満たされたそれには、その一つ一つに人間を模した生物が浮かぶようにして入れられていた。 「人造人型生物兵器・開発コード『OLYMPUS(オリンポス)』──起動体制に入る」  一人の研究員が宣言する。するとすぐにゴウンゴウンという低い音とともに円筒内の液体が排出されていく。  そして円筒の中程まで液体が抜けた時、一人の───否、一体の『生物兵器』が閉じられていた瞼をゆっくりと開いた。  瞬間、バリンという轟音とともに円筒形の容器が爆ぜる。
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