― 第一章 ―

14/17
前へ
/277ページ
次へ
. 「いいよ。ここは構わないから妹尾、見てやれ」  それに気付いた富田が答えると、竜二は肯いて保について工場の裏口に止めた車を見に行った。  保のド派手な紫色のスカイラインは俗に言う『ハコスカ』というもので、大人しく止まっていてもかなり目立つ。 「何処がおかしいって?ドライバーの頭か?」 「バーカ。もうこれは治らないよ」  竜二の冗談に、保が笑った。  西岡保(にしおかたもつ)は中学の時の同級生だ。  その当時は竜二は部活動に夢中だったし、保はあまり学校―― いや、授業に出ないで不良仲間と体育館の裏等で一日の大部分を過ごしていたせいもあって、ほとんど口もきいた事が無かったのだが、この工場に就職して偶然顔を合わせてから話しをするようになった。  竜二に頼めば部品代だけで済むので、保は何処かおかしいと思うとすぐ頼って来た。  そうこうしているあいだにいつの間にか週末事に一緒に走るようになり、気が付くと竜二も今のグループに加わっていた。 .
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加