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「エンジン吹かした時の音がおかしいんだ」
保がエンジンを掛けて、思い切りアクセルを踏む。
大きな音が響いて、竜二は耳に指を突っ込んだ。
「保、おまえさ――」
「何 !?」
今度は大きな声で怒鳴る。
「おまえさ! 何処かでマフラーをぶつけたんじゃないのか !? 車高低いからな!」
「ああっ、そう言えばやったかも!」
保がエンジンを止める。
途端に辺りは静かになった。
「もう結構古い車なんだから、大事にしてやれよ」
竜二に言われて、保は肩を竦めた。
「キャブやポイントとかも見ておくよ。仕事終わってからやるから、そうだな……金曜の朝までには直しておく。それなら土曜は走れるだろ?」
「悪いな、じゃあ頼んだよ」
同じバイク好きの仲間たちと土曜の夜事に風を切って走るのは、いいストレス解消になる。
一週間の疲れもどこかに飛んで行ってしまう気がする。
でも、竜二はいつまでもそれをやっているつもりはなかった。
長くても来年の二月いっぱい、二十歳の誕生日の三月三日までには引退するつもりでいた。
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