― 第一章 ―

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. 「エンジン吹かした時の音がおかしいんだ」  保がエンジンを掛けて、思い切りアクセルを踏む。  大きな音が響いて、竜二は耳に指を突っ込んだ。 「保、おまえさ――」 「何 !?」  今度は大きな声で怒鳴る。 「おまえさ! 何処かでマフラーをぶつけたんじゃないのか !? 車高低いからな!」 「ああっ、そう言えばやったかも!」  保がエンジンを止める。  途端に辺りは静かになった。 「もう結構古い車なんだから、大事にしてやれよ」  竜二に言われて、保は肩を竦めた。 「キャブやポイントとかも見ておくよ。仕事終わってからやるから、そうだな……金曜の朝までには直しておく。それなら土曜は走れるだろ?」 「悪いな、じゃあ頼んだよ」  同じバイク好きの仲間たちと土曜の夜事に風を切って走るのは、いいストレス解消になる。  一週間の疲れもどこかに飛んで行ってしまう気がする。  でも、竜二はいつまでもそれをやっているつもりはなかった。  長くても来年の二月いっぱい、二十歳の誕生日の三月三日までには引退するつもりでいた。  -*-*-*-*-*- .
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