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「中止だ。取り締まりのある日は走らないって、前のリーダーとの約束だからな」
「せっかくの土曜だって言うのによ!」
「保」
「分かったよ」
タオルで手を拭いながら立ち上がった竜二に、保は不満そうに答えて車に乗り込んだ。
「じゃあな。保、みんなに連絡してくれよ」
「ああ」
エンジンを掛け、保はタイヤを鳴らしながら国道へ滑り出した。
「チッ! ちょっと頭がいいからってリーダー面しやがって。警察が怖くて走れるかよ。走りたくないなら、おまえだけ家で寝てろ!」
少し走って竜二の姿が見えなくなると、保は呟いた。
本当の事を言うと、保は竜二の真面目さにいいかげん嫌気がさしていたのだ。
腕力ではとても適わなかったし、前のリーダーが決めた事だったので仕方なく竜二をリーダーと認めて従っていたが、その我慢もそろそろ限界に来ていた。
―*―*―*―*―*―
第二章予告
「何処行くの? こんな時間に」
真由子は一瞬足を止めかけたが、無視して横を通り過ぎようとした。
しかし車は徐行しながらついて来る。
「無視しちゃって―― 可愛いねぇ」
男が窓から手を伸ばして、真由子の長い髪に触れた。
「やめて下さい!」
思わずその手を払う。
男はムッとした顔をすると、後部席に乗っていた仲間に声を掛けた。
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