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土曜日の夜になると、榎木田駅近くの安岐川の河原には何台もの車やバイクが集まって来る。
ほとんどが昼間仕事をしていて、この土曜日を楽しみにしている者たちだ。
「久しぶり! 事故らなかった?」
ミホもいつものように、時間通りにやって来た。
さっそく竜二を探す。
だが辺りを見回してみても、姿が見当たらない。
「保、竜二は?」
ミホは保を見付けるなり、傍へ駆け寄った。
「あいつは今日は来ないよ」
「何で?」
「取り締まりもあるから、今日は中止にするとか言いやがって――」
「えっ?」
途端、眉間に皺を寄せたミホを目にして、保がしまったという顔をした。
「ちょっと保、中止の連絡して来なかったじゃない! 中止の時は、保がみんなに連絡する事になってたでしょ!」
「うるさい! いいんだよ。今日は俺が竜二の代わりにリーダーやるから。ミホ、おまえ、俺の車に乗せてやるよ」
「お断り!」
ミホは腰に手を当てて上体を少し前傾させ、ベーッと舌を出した。
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