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「何だよ、あいつの肩持ちやがって! ずっと言おうと思っていたんだ。俺はあいつみたいな真面目なオボッチャマぶった走り方は嫌いなんだよ! 前みたいに――」
「保、あんた私の兄貴の決めた事が不満なの?」
ミホは保を睨んだ。
ミホの兄、速瀬祐介は、このグループの元リーダーだ。
祐介がリーダーの頃は今よりずっとグループの人数も多く、週末には海岸道路を縦横無尽に走ったものだった。
ところが、ちょうど一年前のある日。
取り締まりに遇って逃げたメンバーの一人が、中央分離帯に激突して死んでしまったのだ。
ミホの兄は責任を感じて引退した。
その時に、次のリーダーとして指名して行ったのが竜二だった。
竜二はミホの兄が言い残したように以前のような乱暴な走り方をしなくなった上に、取り締まりのある日は走るのをやめる事にした。
それに不満な者は、グループを出て他へ移って行った。
保は、その時は仲間が死んだ事がショックで、納得してここに残ったのだ。
けれど、それから一年経った今は違っていた。
自分より後から入って来た竜二が、リーダーをしている事自体不満だった。
おまけに、ミホが竜二を信頼しきっている事も。
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