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整備工場から歩くと、ミホの家までは片道二十分はゆうにかかる。
それでもミホは竜二の腕にぶら下がるようにして、あれこれ話しながら楽しそうに歩いていた。
「ねえ、竜二。身長いくつ?」
問い掛けながら、顔を見上げる。
「ひとつ」
「……もうっ! 違うよ!」
プウッと頬を膨らませたミホに、竜二が微笑む。
「180センチくらいかな」
今度は真面目に答えた。
「ふうん。お兄ちゃんより大きいや。ねえ、高校の時何かスポーツやってた?」
「…………やってたよ」
竜二はしばらく黙ってから答えた。
「何? 何やってたの?」
「忘れた」
「何よ、教えてくれたっていいじゃない。ケチ!」
ミホは竜二の腕に絡ませていた右手を解いて前へ回り込むと、少し首を傾げて顔を覗き込んだ。
「ああ、分かった! あんまり下手クソで、思い出したくないんだ。そうでしょう?」
「そうだよ。よく分かったな」
竜二が笑って人差し指でミホの脇腹をつつく。
ミホは小さく「きゃっ」と声をあげて身を捩った。
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