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暗い歩道に足音が響く。
喜多嶋真由子は道を急いでいた。
今日は大学の帰りに行っているバイト先のレストランの人手が足りなくて、いつもより遅くまで残る事になってしまったのだ。
バスを降りると、少し離れたコンビニの傍まで自転車を取りに行かなければならない。
真由子はその途中、道の向こうにある明かりのついた整備工場に目をやって立ち止まった。
いつも一生懸命バイクを整備しているあの人が、残っているのだろうか?
そんな事を思いながら、また歩き始めた時だった。
一つ向こうの信号を凄い勢いで曲がって、一台の車と三台のバイクが飛び出して来た。
派手な紫の車が大きな音を立てながら、急いでいる真由子の横を一旦は通り過ぎる。
ところが十メートルほど行って急停車すると、他に車がいないのを良い事に突然Uターンして反対車線を逆走し、やがて真由子の数メートル程先に止まった。
運転席の窓が開いて、中から若い男が顔を出した。
「何処行くの?こんな時間に」
真由子は一瞬足を止めかけたが、無視して横を通り過ぎようとした。
しかし車は徐行しながらついて来る。
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