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「ミホ、おっはよう! ねえ、一昨日の夜見たわよ。光が丘の駅前で」
「何を見たって言うの?」
廊下の窓に寄り掛かって外を見ていたミホは、如何にも煩いと言わんばかりに、親友の須田智佳子へ視線を向けた。
「彼氏のバイクに乗ってるところよ」
「で、それがどうしたの?」
ミホは高校三年。
家族は夜間保育所に勤めていて一日に何分も顔を合わせない母と、高校を卒業してファミリーレストランでコックをしている三歳年上の兄。
「どうしたのって……ヤバイじゃん。先生に見付かったらどうすんのよ。それにミホは童顔で、髪切ってからよけいに幼く見えるんだから、あんな時間にうろうろしていて補導でもされたら困るでしょう?」
肩につかない程度の長さでシャギーカットにした髪に手を触れながら、ミホは涼しい顔だ。
「見付かった時は見付かった時よ。その時考えればいいわ」
「でも、あんたの彼は――」
今度はジロリと睨みつつ、智佳子を遮って問い掛ける。
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