― 第一章 ―

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. 「ミホ、おっはよう! ねえ、一昨日の夜見たわよ。光が丘の駅前で」 「何を見たって言うの?」  廊下の窓に寄り掛かって外を見ていたミホは、如何にも煩いと言わんばかりに、親友の須田智佳子へ視線を向けた。 「彼氏のバイクに乗ってるところよ」 「で、それがどうしたの?」  ミホは高校三年。  家族は夜間保育所に勤めていて一日に何分も顔を合わせない母と、高校を卒業してファミリーレストランでコックをしている三歳年上の兄。 「どうしたのって……ヤバイじゃん。先生に見付かったらどうすんのよ。それにミホは童顔で、髪切ってからよけいに幼く見えるんだから、あんな時間にうろうろしていて補導でもされたら困るでしょう?」  肩につかない程度の長さでシャギーカットにした髪に手を触れながら、ミホは涼しい顔だ。 「見付かった時は見付かった時よ。その時考えればいいわ」 「でも、あんたの彼は――」  今度はジロリと睨みつつ、智佳子を遮って問い掛ける。 .
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