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「危ないなあ、怪我したらどうするんだよ」
笑いながら学生証に目をやる。
「喜多嶋真由子。八月十五日生まれ……十八歳。へえ、美大生か――」
「それ返して下さい。私帰るんですから」
真由子の伸ばした手を払い除け、男が続ける。
「じゃあガソリン代払って行けよ」
「えっ?」
「ここまで乗せてやっただろ?」
困った真由子が思わず呟く。
「そんな……」
「そうだなぁ―― 五万も貰えば足りるかなぁ」
「五万円だなんて! そんな大金持っていません」
「そうかぁ……だったら、金で払わなくてもいいぜ」
男はまるでその言葉を待っていたかのように、ニヤリと笑って突然真由子を羽交い締めにした。
「何するの! 離して!」
「おい! ボケッとしてんなよ!」
男の怒鳴り声にバイクに乗っていた二人が手を貸して真由子を抱え上げ、橋の下の草むらへと投げ出す。
「大人しくしていればすぐ離してやるよ」
リーダーの男が慌てて起き上がろうとする真由子に馬乗りになる。
真由子は、改めて自分の置かれている状況を把握した。
そして、目の前の男の本当の目的も。
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