99人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「バイク貸せ! 俺が行く!」
保はバイクにまたがると、エンジンをかけた。
他の男たちもそれに続く。
「車と顔を知られてるんだ。絶対に逃がすな! ヤっちまえば黙らせられる!」
「誰か――」
真由子は真っ暗な闇に向かって走り始めた。
後ろの方でバイクの音がして、パッとライトが光った。
「いたぞっ! こっちだ!」
堤防の上を走る真由子の背に、ヘッドライトが近付いて来る。
長く伸びた影がだんだん色濃くなって行く。
砂利道に足を取られて転びそうになる。
それでも真由子は必死で走った。
「い……嫌……来ないで……来ないで――」
アクセルを吹かして、バイクはスピードを上げる。
「嫌ああぁぁ――!」
次の瞬間、ヘッドライトを浴びた真由子は、何を思ったのか突然立ち止まり、真っ直ぐにバイクの方を向いた。
「うわぁっ――!」
考えもしなかった真由子の行動に、保が慌てて急ブレーキをかける。
「保!」
転倒したバイクが砂煙を上げ、そのままスリップし続ける。
そして道の真ん中で立ち竦む真由子を、空中高く跳ね上げ――
.
最初のコメントを投稿しよう!