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竜二はミホを家まで送った後、もう一度工場に戻った。
やっと整備の続きを済ませた頃には、もう午前二時を過ぎていた。
道具を片付けてバイクを外へ出し、シャッターを閉める。
「ちょっと寄り道して行くか」
バイクに話しかけるように呟き、ヘルメットを被る。
腹の底に響くような音を立てて、ワインレッドのバイクは走り出す。
夏とはいえ、深夜ともなると風は結構涼しい。
だいたいの信号は点滅に変わっていて、細い道はほとんどノンストップで走る事が出来る。
低速走行ではノッキングに似た症状を起こすZZ-R600も、気を使わなくて済む。
国道246号を西へ――
風を切って竜二は走った。
光が丘の駅に差し掛かる。
竜二は公園の入り口に自動販売機を見付けると、その前でバイクを止めた。
コインを投入してボタンを押し、取り出し口から缶を取り出す。
ヘルメットを脱いで傍のガードレールに腰掛け、コーヒーを口にする。
思わずホッと息をついたその時だった。
突然少し離れた茂みの中で、何か大きい物が動く気配がした。
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