― 第二章 ―

22/23
前へ
/277ページ
次へ
.  こういう事件の場合、その時の状況を事細かに話さなくてはならない。  いつ、何処で、誰に、何をどんなふうにされたのか。  それ以前に、男性経験があったのか無かったのか――  しかも犯人が見付かって裁判にでもなれば、公の場でそれを何度も繰り返す事になる。  被害者は被害者であるのにも関わらず、それによって好奇の目で見られたりしてまた辛い思いをするのだ。  小さく溜め息を吐き、竜二は携帯をポケットに戻した。  改めて話しかける。 「家は何処? ―― この近く?」  少女は黙ってうつむき、それから蚊の泣くような声で答えた。 「私―― 帰れない」 「えっ?」 「家にはもう……帰れない……」 「友達の所は?」  また首を横に振る。 「親戚は?」 「もう何処にも行けない……。行く所が無い……」  竜二は困って溜め息をついた。  こんな事になっては、そう考えるのも仕方ないかも知れない。  時計を見ると、もう三時近くになっている。  事情を話してミホの所に預けようかと思ったが、夜中の三時ではそれも出来なかった。 .
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加