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「暴走族だからって言うの?」
「別に私は……」
後の言葉を飲み込んだ智佳子へ真っ直ぐに向き直り、ミホは続けた。
「竜二はね、昼間は真面目に働いてるの。そんでもって週に一回、土曜日の夜に集まって仲間と走ってるだけ。そりゃスピード違反くらいはするけど、その程度は誰でもしてるでしょ? それを―― 良く知りもしないで彼の事悪く言わないで」
ミホの彼、妹尾竜二(せのおりゅうじ)は十九歳。
スラリと背が高く、スポーツマンタイプ。
ややクールな感じの端整な顔立ち。
ミホは竜二の見た目も気に入っていたが、何より内に秘められた包み込むような優しさが好きだった。
竜二は高校を二年で中退して、今は街の自動車整備工場で働いている。
智佳子の言うように小さなグループのリーダーをしていて、週末になると海岸道路などを一晩中走り回っていた。
ミホは一昨日の土曜の集会の後、竜二のバイクでそのまま千葉の遊園地へ出かけ、昨日一日遊んで竜二の部屋に泊まり、今日はそこから登校していた。
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