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葉月がまた口を開く。
「あの―― 御飯出来てます」
「ああ、ありがとう」
そう言えば、味噌汁のいい香りが部屋の中に漂っている。
竜二はTシャツとジーンズを急いで身にまとい、顔を洗った。
その間に葉月は畳の上に敷いてあった布団をたたんで、テーブルに食事の支度をした。
味噌汁の具は、竜二の一番好きなジャガ芋と玉葱。
綺麗に整った形の卵焼きも並んでいる。
差し出された茶碗を前に置き、手を合わせる。
そして、竜二は最初に味噌汁を飲んだ。
「美味い! 君、料理上手いんだね」
卵焼きも出汁が効いていて、ミホが作るしょっぱかったり薄かったりするそれとは比べ物にならない。
「口にあって良かったです」
竜二の褒め言葉に、葉月は恥ずかしそうに微笑んだ。
色白の小さな顔に、パッチリとした黒目勝ちの瞳と長い睫。
引き締まったピンク色の唇。
小さくつんと尖った鼻。
しっとりとした、黒くて長い髪――
まるで人形のような愛らしさに、竜二は葉月を改めて見つめた。
「あの……何か?」
「いや、何でもない」
女の子の顔をまじまじと見るなんて不作法な気がして、竜二は茶碗に目を移した。
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