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「その……ちょっと無茶して――」
「おまえじゃないだろう?」
「えっ?」
「事故ったのは、おまえじゃないだろう?」
訊かれて、掌に汗が噴き出す。
「だっておまえ、ちっとも怪我して無いじゃないか。いったい何をやった?」
問い詰められて、雅人は慌てた。
「だから、ちょっと無茶して……」
「『無茶』って何だ? ハッキリ言えよ」
竜二が雅人の肩を掴む。
雅人は落ち着きなく視線を泳がせ、真っ直ぐに下ろした両手を握り締めた。
「わ、悪いのは俺じゃないんだ。あの時、保の奴が――」
「保がどうしたって?」
「保が――」
竜二の問いかけに雅人が何か言おうとした瞬間、車のクラクションが鳴って紫の派手な車が入って来た。
「保……」
途端に、雅人は口をつぐんだ。
「竜二、それやったのは雅人じゃないよ」
降りて来た保を見て、竜二はバイクに傷を作った犯人を知った。
保は左腕に包帯を巻き、左足を引きずっていたのだ。
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