― 第三章 ―

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. 「そうみたいだな」 「俺がやったんだ。久しぶりにバイクに乗りたいと思って、雅人が嫌だって言うのを無理に借りたんだよ。そうしたら道に砂利が落ちててスリップしてさ、このザマだよ。慣れない事は、するもんじゃないな」  包帯を巻いた左腕を見せ、保は肩を竦めた。 (違う―― これはアスファルトの上で出来た傷じゃない。砂利道で、スピードを出していて転倒した傷だ。でなきゃ、割れたカウルに土が付いているわけがない)  竜二は心の中で呟きながらも、別の事を口にした。 「何故、土曜日中止にしなかった? 俺は中止だと言ったはずだ」  保は一瞬黙って、チラリと雅人を見た。  思わず唾を飲み込んだ雅人から、竜二に視線を移す。  そして金髪を掻き上げながら、竜二の問いに答えた。 「悪かったよ。でも、何で取り締まりがあるだけで中止にしなくちゃいけないんだ? せっかく走るのを楽しみにしているのに」 「土曜日はもう来ないわけじゃない。それに、取り締まりのある日に走らない理由は分かっているだろう? あれからずっとそうして来たじゃないか」  竜二にじっと見つめられて、保は溜め息をついた。  その真っ直ぐな眼差しに「反論は許さない」―― そう言われているような気がしたのだ。 .
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