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「凄いよ、十分だ。あんな材料で良く出来たね」
竜二の言葉に、葉月は微笑んだ。
「でも……」
「何? どうかした?」
「もう明日の朝の分が―― ごめんなさい」
葉月に言われて、もう何日も買い物をしていない事を竜二は思い出した。
いま冷蔵庫に入っている物だって、この前ミホが学校帰りに持って来た物だった。
「じゃあ、食事が終わったら買い物してこよう」
「あの……私も一緒に行っていいですか? お店が何処にあるか知りたいし、それに――」
問い掛けた葉月が、少し頬を染めて下を向く。
「下着の替えを……」
竜二もハッとして赤くなった。
そうだった。
葉月はあの日、小さな財布一つ持っていただけだったのだ。
当然着替えなどあるはずもない。
今着ているダボダボのTシャツと、ベルトで思い切り締め上げたジーンズだって竜二が貸してやった物だった。
「ごめん、気が付かなくて。―― 一緒に行こう」
竜二の言葉に、葉月は嬉しそうに微笑んだ。
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