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食事を済ませると、二人は暗くなった街へ出た。
葉月は竜二のやや斜め後ろを歩いて行く。
「この先を左に行った所に、九時までやってる大型スーパーがあるから。着る物も、普段着ならそこで買えるよ」
「はい」
葉月が返事をしたちょうどその時、前から一匹の犬が近付いて来た。
おそらく以前は飼い犬だったのだろう。
ボロボロになった首輪をしている。
その犬が足を止める。
そして突然、葉月に向かって唸り声を上げ始めた。
身体を低く構えて今にも飛びかかりそうな様子に、竜二は葉月の腕を引き寄せて自分の後ろに隠した。
「しっ! あっちへ行け!」
それでも野良犬は怯みもせず、牙を剥き出して一歩一歩向かって来た。
虫の居所が悪いのか、何か異常な感じがするほど凶暴な雰囲気を漂わせている。
竜二はキョロキョロと辺りを見回し道の端に落ちていたコーヒーの空き缶を見付けると、葉月を背にしたままゆっくりそちらへ動いて行った。
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