― 第三章 ―

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.  それを野良犬目掛けて思い切り蹴飛ばす。  缶は見事に鼻面に当たり、犬は悲鳴を上げて逃げて行った。 「もう大丈夫」  ホッと溜め息が出た。  途端に竜二の背中にしっかりしがみ付いていた葉月が、パッと手を離して離れる。 「ごめんなさい。私ったら――」  その言葉に、竜二は葉月の手を取って無言のまま歩き出した。  不思議そうに葉月が顔を見る。 「あの……」 「君は俺に『ごめんなさい』ばかり言ってる」 「ごめんなさい」 「ほら、また言った」 「ごめん――」  そう言いかけて、葉月は手で口を押さえた。 「君は何も悪い事なんかしていないだろう? だから『ごめんなさい』なんて言わなくていい。俺には気を使わなくていいよ」 「でも――」 「君がいつまで俺の所にいるかは分からないけど、そんなに気を使っていたら同じ部屋でなんて暮らして行けないよ」  竜二は足を止めると、葉月の方を向いた。 「そうだろ?」  葉月が小さく肯く。 .
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