― 第三章 ―

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. 「早くしろよ。あと、約束のビール忘れんなよ」 「分かってるって。うるさいなお兄ちゃんは!」  ミホは兄の祐介と、スーパーまで買い物に来ていた。  明日の調理実習で急に必要な物が出来たので、家にいた祐介に『一人で行けない』とか『ビール買ってあげるから』等と言ってバイクに乗せて貰ったのだ。  祐介は三歳年上の二十一歳。  スラリと背が高く、痩せても太ってもいない。  癖の無い髪は少しだけ茶色に染められていて、前髪は目にかかる程度。  襟足はファミレスのキッチンという職業柄、首が隠れないくらいに整えられている。  二重なのに涼しげな目元は、少しワイルドな印象を与えていた。  それでも、たった一人の妹であるミホには優しい兄だった。 「これも買ったし、これも買った……」  メモを見ながら呟く。  ここは自分の家からは少し離れていたが竜二のアパートからは近く、しょっちゅう買い物に来て要領は良く分かっていた。 「これでOK―― っと。あっ! ビールだ」  祐介との約束を思い出して、売場の天井から下がっている案内表示に目をやる。 「ええっと……ビールの売場は……」 .
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