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二階に駆け上がり、周囲を見回す。
「何処行ったんだろう……」
キョロキョロしながら通路を歩いて行くが、なかなか見付からない。
「まさかここにはいないよね」
フッと笑って女性用の下着売場の前を素通りしようとしたその時、あのTシャツがチラリと見えた。
「えっ? 嘘……こんな所に?」
まるでドラマの刑事のように、棚の陰に隠れて覗き込む。
もう竜二のTシャツは見えなくなっていた。
「あれ?」
今度は急いで通路に入ってみる。
そして、さっきTシャツが見えていた所まで駆け足で来た時だった。
すぐ横から歩いて来た人に思い切り体当たりして、ミホは思わず声を上げた。
「あっ!」
「きゃっ!」
ぶつかった相手がふらついて膝をつく。
「ごめんなさい。大丈夫ですか? 私、急いでて――」
謝罪の言葉と共に、ミホは身体が二つ折れになるほど頭を下げた。
「大丈夫。気にしないで」
その女性は立ち上がると、肩から前へ垂らした長い三つ編みを揺らして微笑んだ。
パッチリした大きな瞳の、まるで―― そう、人形のようだとミホは思った。
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