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「すみませんでした!」
もう一度丁寧にお辞儀をして、慌てて通路を戻る。
後ろを振り向くと、さっきの人が篭を持って奥の方へ歩いて行く所だった。
「あ……」
その人のTシャツの背中の柄を見て、ミホはさっきの謎が解けた。
竜二だと思ったのは、彼女のTシャツだったのだ。
「私ったら、あわてん坊――。あっ!」
腕時計に目をやる。
二階へ来て、もう十分も経っていた。
「しまった! お兄ちゃんに叱られる」
思わず呟き、階段を駆け降りて一階へ急ぐ。
先にビール売り場へ行き、いつも祐介が飲んでいる銘柄の缶を手にしてさっきの場所へ戻る。
「ゴメン、お待たせ」
そして、レジの近くで待っていた祐介に思い切りいい笑顔でビールを差し出した。
「はい! お兄ちゃん」
「遅い! 笑って誤魔化しても駄目だ!」
祐介はミホの額を人差し指で弾いた。
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