― 第三章 ―

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.  しかし食べる物を買うといっても、何を買えばいいか思いつかない。  作りたい物があれば別だが、元々料理には興味も無いので、何の目的も無く材料だけを眺めても閃くわけがない。  仕方が無いので、竜二は全部葉月に任せる事にした。  葉月は野菜や肉や魚、そして調味料を手に取ってはよく確かめて籠に入れて行く。  もう無くなりかけていたシャンプーや歯磨き粉も、竜二が使っている物と同じ物をちゃんと覚えていた。 「竜二、お菓子も買っていい?」 「もちろん」  竜二が答えると、葉月はさっそくレーズンクッキーとマカデミアナッツ入りのチョコレートを手にした。 「それ好きなの?」 「ええ。竜二は?」  少し間を置いて答える。 「高校生の頃……好きだった」  途端、葉月は黙って微笑み、レーズンクッキーとマカデミアナッツのチョコを棚に戻した。 「葉月……」 「今好きな物を買いましょう」  もう一度静かに微笑む。  竜二は自分の思いを理解して貰えた気がして、葉月の肩にそっと手を置いた。 .
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