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翌日――
竜二が目を覚ますと、葉月は朝食の支度をしていた。
目を擦りながら声を掛ける。
「おはよう」
「おはよう。昨日遅かったのね。ごめんなさい、私寝てしまって……」
「いいよ、そんな事。俺が遅い時は、先に寝ててかまわないよ。君は俺より早く起きるんだから」
葉月は肯くと、また流しの方を向いた。
部屋とキッチンの境目の柱にもたれて、葉月の後ろ姿を眺める。
暫くして竜二は思い切ったように葉月に近付き、後ろからそっと抱き締めた。
「葉月……」
葉月は少しも驚いた様子も無く、肩越しに竜二へ目をやった。
「竜二?」
「君に出逢ってからまだそんなに日も経っていないのに……だけど……好きだ。こんな気持ちは初めてだ」
葉月の耳元に竜二は囁いた。
正直な気持ちだった。
実際、何人かの娘と付き合った事はあったが、こんなに一人の女性を愛おしいと思った事は今まで一度もなかったのだから。
好きだと思う気持ちの深さは、イコール知り合ってからの長さではない。
そう思えた。
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