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「私もあなたが好き――」
こちらに向き直った葉月の肩を掴み、顔を近付ける。
微かに開いたピンクの唇に引き寄せられるように、唇を重ねる。
閉じられた瞳。
長い睫は少し震えていた。
そこから溢れ出た涙が、一筋の雫となって紅潮した頬を滑り落ちる。
唇を離し、竜二は静かに問い掛けた。
「何が悲しいの?」
「違うの……悲しいんじゃない。女の子はね、嬉しくても泣くものなのよ」
「君は泣き虫だね」
竜二は、葉月の濡れた頬に唇を押し当てた。
「ずっとこうしていたい……」
葉月は、竜二の胸に静かに顔を埋めた。
東側の窓から朝日が射し込んでくる。
また熱い一日が始まろうとしていた。
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