― 第四章 ―

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. 「葉月!」  竜二は思わず声を上げた。  頭から冷水を掛けられたように、一気に酔いが醒める。 「葉月―― そんな物置いて」 「嫌……来ないで。お願いだから……こっちへ来ないで……」  ポロポロと涙を流しながら哀願するように呟く。  ブラウスがはだけて、胸に残されたまだ新しい切り傷が竜二の目に飛び込んで来た。 「葉月ごめん――。悪かったよ。もうしないから、何もしないから包丁なんか置いて」  葉月はひどく怯えた目をして、首を横に振った。  包丁を握った手が、小刻みに震えている。 「嫌……」 「葉月、頼むから――」  竜二が一歩前に踏み出す。 「嫌ぁあああぁっ! 来ないでぇええぇっ!」  それと同時に葉月は包丁を離すと、身を翻して外へ飛び出した。 「待てよ! 葉月、何処へ行く !?」  竜二もすぐに後を追って階段を駆け下りる。  しかし、葉月の姿はもう何処にもなかった。 .
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