― 第四章 ―

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.  大きな衝突音と共に、中川は宙を舞った。  まるで投げ捨てられた人形のように、頭からアスファルトへ落ちていく。  グシャリと鈍い音を立て、ヘルメットに皹が入る。  その隙間から流れ出した真っ赤な液体は、見る見るうちに水溜まりを染めた。 「ゆる……し………………て………………」  小さく呟いて、中川は目を閉じた。 「即死だな。うはぁ…… 頭、ぐちゃぐちゃだぜ」 「ブレーキもかけずに飛び出したみたいだ」 「かわいそうに。まだ若いようなのに……」  事故を目撃して集まって来た人たちは、口々に呟いた。  雨足が強くなって、冷たいアスファルトに横たわる中川の身体に降り注いでいた。  -*-*-*-*-*- .
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