― 第一章 ―

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.  竜二は誰かが階段を下りて行く音で目を覚ました。 (あれは、ミホの機嫌の悪い時の足音だ)  時計を見ると、もう七時半になっていた。  目を擦りながら起き上がり、カーテンを開ける。  それから風呂場へ行って顔を洗い、着ていたTシャツを脱いで洗濯機に放り込んだ。  調理台の上に、ミホが作った卵焼きと納豆がラップを被せて置いてある。  小さな鍋には、味噌汁も用意してあった。  茶碗に飯をよそい、味噌汁を掛けて立ったまま掻き込む。  しかし卵焼きを口に入れた後、急いで流しに口の中の物を吐き出した。 「ミホの奴!塩、思い切りいっぱい入れたな」  急いで水でうがいをする。  それからミホの満足そうな顔が浮かんで、竜二はクスッと笑った。 .
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