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保は雅人と別れてからも、その事が気になって仕方がなかった。
そして何となく、その足で竜二の工場へ向かった。
やはり竜二も事故の事は知らなかった。
「中川が?」
保は雅人に聞いた事を、竜二に話して聞かせた。
「信じられない……何故そんな」
「そう思うだろ?俺も信じられなくて―― なあ、明日はどうする?」
「…………」
油に塗れた手で工具を持ったまま、竜二は何か考えているようだった。
「竜二」
呼び掛けた声に、竜二が顔を上げる。
「あ……悪い。明日はやろう。みんなに話したい事があるし」
話したい事――
それはきっと中川の事だろう。
そう理解して、保が肯く。
「分かった。じゃあいつもの時間に」
保は軽く手を上げると、大通りへと出て行った。
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