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夏休みになって、ミホは退屈していた。
宿題は早めに片付けて後でたっぶり遊ぼうと思い、この一週間ほどで大体済ませてしまっていた。
しかし親友の智佳子も他の友人もアルバイトで忙しく、遊びたくても遊び相手がいない状態だったのだ。
「つまんないぃいっ!」
「そんな所でひっくり返ってるくらいなら、どこかへ行って来いよ」
夜勤から帰って来て、早めの昼食を取っていた祐介が笑った。
「だってぇ――」
「お菓子喰って寝っころがってばかりいたら、太るぞ」
「お兄ちゃんって嫌な奴!」
顔を顰めて、ベーっと舌を出す。
それから急に跳ね起きた。
「そうだ!竜二のアパートに行って来よう」
「竜二のアパートって……あいつ仕事だろう?」
「そうだよ」
「じゃあ行ったってしょうがないじゃないか。―― 中にも入れないのに」
新聞に目を通しながら、スパゲティを口に押し込む。
「ジャジャーン!鍵持ってるもん」
「えっ?」
途端に祐介は顔を上げた。
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