― 第五章 ―

4/25
前へ
/277ページ
次へ
.  夏休みになって、ミホは退屈していた。  宿題は早めに片付けて後でたっぶり遊ぼうと思い、この一週間ほどで大体済ませてしまっていた。  しかし親友の智佳子も他の友人もアルバイトで忙しく、遊びたくても遊び相手がいない状態だったのだ。 「つまんないぃいっ!」 「そんな所でひっくり返ってるくらいなら、どこかへ行って来いよ」  夜勤から帰って来て、早めの昼食を取っていた祐介が笑った。 「だってぇ――」 「お菓子喰って寝っころがってばかりいたら、太るぞ」 「お兄ちゃんって嫌な奴!」  顔を顰めて、ベーっと舌を出す。  それから急に跳ね起きた。 「そうだ!竜二のアパートに行って来よう」 「竜二のアパートって……あいつ仕事だろう?」 「そうだよ」 「じゃあ行ったってしょうがないじゃないか。―― 中にも入れないのに」  新聞に目を通しながら、スパゲティを口に押し込む。 「ジャジャーン!鍵持ってるもん」 「えっ?」  途端に祐介は顔を上げた。 .
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加