― 第五章 ―

6/25
前へ
/277ページ
次へ
. 「何怒ってるんだろ? ……でも、ま、いいか」  部屋へ戻って、クリーム色の新しいワンピースに着替る。  それから鞄に財布を入れ、すぐに部屋を飛び出した。  帰りは竜二に送って貰えるように、自転車はやめてバスで行く。  どうせまた冷蔵庫の中は空っぽに決まっているから、途中のスーパーで買い物もした。  細い路地を入って行くと、アパートが見えて来る。  洗濯して掃除して夕食も作っておけば、竜二はきっと喜んでくれるだろう。  もしかしたら、ファーストキスのチャンスかもしれない。  足取りも軽く階段を駆け上がる。  ドアの前に立ち、鍵を出そうとポケットに手を入れた時、部屋の中で音がした。 「休みかぁ。ラッキー!」  今日ここへ来て、正解だったなとミホは思った。  勢い良くドアを開ける。 「りゅ、う、じ!」  だがすぐに「あっ――」と声を上げて黙ってしまった。  長い髪の綺麗な女の人が、可愛い花柄のエプロンをしてそこに立っていたのだ。 .
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加