99人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「何怒ってるんだろ? ……でも、ま、いいか」
部屋へ戻って、クリーム色の新しいワンピースに着替る。
それから鞄に財布を入れ、すぐに部屋を飛び出した。
帰りは竜二に送って貰えるように、自転車はやめてバスで行く。
どうせまた冷蔵庫の中は空っぽに決まっているから、途中のスーパーで買い物もした。
細い路地を入って行くと、アパートが見えて来る。
洗濯して掃除して夕食も作っておけば、竜二はきっと喜んでくれるだろう。
もしかしたら、ファーストキスのチャンスかもしれない。
足取りも軽く階段を駆け上がる。
ドアの前に立ち、鍵を出そうとポケットに手を入れた時、部屋の中で音がした。
「休みかぁ。ラッキー!」
今日ここへ来て、正解だったなとミホは思った。
勢い良くドアを開ける。
「りゅ、う、じ!」
だがすぐに「あっ――」と声を上げて黙ってしまった。
長い髪の綺麗な女の人が、可愛い花柄のエプロンをしてそこに立っていたのだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!