竜の章 その2

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「なんだよ、お前!」  男達は急に余裕のない表情になり、女性を囲んだ。  数人の男を前にしても彼女は全く怯まなかった。 「どうせ、今日返された模試の結果が悪くてこの子たちに八つ当たりでもしてたんでしょ?大した度胸もないくせに、小学生相手に粋がってんじゃないわよ!」  確か・・・彼らの学校は有名大学への進学率を誇る進学校だった。そして彼女もまた、その制服を身に纏っている。恐らく同じ学校の生徒の出現に男達は動揺したのだろう。 「邪魔すんなよ。関係ないだろ!?」 「何て低俗な発言なの?同じ学校の生徒とはとても思いたくないわ。こんな無駄な事してる暇があるなら家に帰ってお勉強でもしたら?」 「なっ!?」  あまりにも下に見られたことにカッとなった彼らが暴れ出しそうになった、その時・・・ 「やめておいた方がいい。彼女は僕にとって大切な人だから。」  今度は落ち着き払った男性の声が聞こえた。  女性の後方から聞こえた声に、その場にいた全員が振り返った。そこにはもう一人同じ学校の男子生徒が立っていた。 「せ、生徒会長!」  男の一人が叫んだ。 「おい、やめた方がいいぜ。会長に睨まれたら無事卒業できないかも・・・」 「ちっ・・・何なんだよ、一体・・・」  ガラの悪い集団は小声で素早く相談し合うとバラバラとその場を離れていった。
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