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「あ・・・ごめんなさい。」
奈都は彼に向き直り俯きがちに返事をした。
「威勢が良いのは構わないが、俺の目の届かない所で危ない事はしないでくれ。」
「あなたに迷惑をかけるつもりはなかったわ。」
「それだけ?」
「え?」
「言う事はそれだけか?」
「・・・助けてくれてありがとうございました。」
「よろしい。」
不良にさえ強気な彼女もどこか彼には強く出られないようで、やたら丁寧な調子でペコリと頭を下げた。そしてもう一度竜斗を見ると
「私は河原奈都。よろしくね、竜斗クン!」
笑顔で差し出された彼女の手を握り握手をした。
「あ、俺は坂巻翔太です!」
出遅れた翔太が奈都の手を取り握手した。
その時竜斗は彼女の手を握っていた自分の右手を不思議そうにじっと見つめていた。
「ごめんね、二人とも・・・ウチの学校のバカ共が。」
彼女が謝る必要はない、と竜斗は言おうとしたが翔太がさっさと彼女の手を取り犬を見せに行ってしまった。
(なんだよ、翔太のやつ・・・顔がキレイな女なら誰でもいいのかよ!?)
その時はまだ心の中で何故だか翔太を怒っている自分に竜斗は何の疑問も抱かなかった。
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