竜の章 その2

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 しかし、そんな竜斗の様子に気付き目を光らせた人物がいた。 「奈都、帰るぞ!」  生徒会長が語気を強めて彼女を呼んだ。 「え・・・でも・・・」  竜斗達を見て彼女は言葉を濁した。  煮え切らない奈都に痺れを切らした彼は彼女に近付くと少し強引に手を引いた。 「あ、待ってよ・・・」  奈都の同意を得ないまま生徒会長が彼女を連れて行こうとしたその瞬間――― 「・・・手を離せ、小学生。」  男の静かな声に先ほど胸倉を掴まれた時以上の恐怖が竜斗を脅かした。 「・・・・・・」  何も言い返せなかったが、竜斗は彼とは逆の手を掴んで奈都を離さなかった。そして二人は静かに睨みあった。翔太は突然のことにパニックを起こしそうだった。 「ごめんね、二人とも!じゃぁまた今度。」  奈都は無理に笑顔を作ると二人に別れを告げた。そして少し強引に竜斗の手を振り払うと会長と共に去って行った。竜斗は手を振り払われたことがショックで堪らなかった。  だけど竜斗は何故彼女を引き止めたかったのかも、こんなにもショックを受けている理由も全く理解していなかった。ただただ心の赴くまま行動を起こしたに過ぎなかった。
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